恋輪(RENRIN)

「あれ?」

亨ちゃんらしき人、けど、一人じゃない?

誰?

あ、見覚えがある。

亨ちゃんが前に付き合ってたことがあった気がする。

足がぶるぶると震える。

まさかまさか

嫌な予感が私を包む

二人でにこやかに会話して、

多分私を待っている。

行けないよ。

ぐしゃりと目の前のレシートを握りつぶした。

行けっこないよ。


何処をどう歩いて帰ったのか

思い出せない。

部屋に入るとベットにもぐり込んで

泣いた。

亨ちゃんに振り向いて欲しくて、

背伸びしてつけた香りが

狭い空間で、

甘く香って苦しかった。

けど、泣いているうちに鼻が詰まって匂いなんて感じなくなった。

意味ないじゃん。

まるで、今のあたし。