彰吾がテーブルを叩いた。 コーヒーがひっくり返って、 黒い水溜りが出来た。 「………黙れ」 目を丸くした芽衣は、 別段怯えることもなく。 むくれた顔でソファに座った。 「私、帰るね」 「心実?」 「ごめん。用事、思い出しちゃった」 我ながら嘘臭い言い訳だ。 嘘だけど。 あまり、ここにはいたくなかった。