一通りサッカー部の練習を見た後、私はまた教室へ戻った。




「あ、お帰り愛里。


用事片付いた?」


「嗚呼、うん。


何とかね」




雅に対して、私は嘘を吐いた。


部活の用事なんて、ありもしないのに。


本当は、沖本君の恋人の振りをしに行ってただけ。


雅を好きでない振りをしただけ。


それだけ。




「あ、そうだ。


雅~」


「ん~?」




あ。



何となく雅って呼んでみただけで、別にこれといって話したい話題もない。


どうしよう。




「雅………好きな人いる~?」




私は咄嗟に、雅にそう言った。




「えっ、またその話!?」


「いいじゃん、教えてよ~」