平井さんは、本棚にあった携帯小説と黙って手に取り、レジへ向かおうとした。




けれど、この偶然の出会いはチャンスかもしれない。


このチャンスを逃したら、私の高校生活は、中学の時よりも味気の無いものになってしまうかもしれない。


平井さんと、どうしても友達になりたい!




と思った私は、思わず、




「あ、あの!」




と、平井さんに声を掛けた。


その声に反応して、平井さんがピタっと止まる。


平井さんの綺麗な髪が、サっと揺れた。




あ。


どうしよう。


声を掛けたはいいものの…一体、何を話せば…………。




その時、ふと平井さんの手にある小説が目に入った。


これは……。


私の買おうとしている小説と一緒だ!




「平井さんも、その本を買うの?」