最初で最後の恋

どうやら、発売される小説には、書き下ろしのエピソードや、


マドンナ視点での物語、主人公の悲しい過去などが収録されているらしい。




発売は……七月か。


後二ヶ月…結構早いけれど、その時の私にとっては、その二ヶ月がとてつもなく長く感じた。




その時、キーンコーンカーンコーン、とチャイムが鳴った。


昼休みの終わりを知らせる予鈴。




平井さんは、チャイムが鳴った瞬間、真っ先に図書室から飛び出してしまったので、


私は仕方なく、一人で図書室の扉を閉めて、鍵を掛けて、鍵を職員室へと届けた。




「すみません、図書委員の片岡です。


図書室の鍵を返しに来ました」


「おお、片岡か。


毎週毎週、ご苦労さん」




担任の南林先生が、私から図書室の鍵を受け取った。




「そういえば、いつも鍵を返しに来るのは片岡だな。


もう一人の図書委員は、誰だったかな?」


「えっと………平井さんですが」


「そうか。分かった」