「うん、キスしようとしてくる沖本君は、


正直言って、怖い…。


強引だし……だから、無意識に拒んじゃうの…」




これも嘘。


沖本君が私にキスを迫ったのはたったの一回だけ。


その一回を拒んだら、もうキスしようとしてこなくなった。


そんな臆病な沖本君が、強引にキスなんかしようとする訳ない。




その嘘を吐いた時も、私は雅の目を見て言った。




「そう…」




雅は、まんまと騙されたようだった。




「こ、これで、沖本君とは、もう関わらないでくれる?」


「勿論よぉ」


「良かった……!」


「じゃあ、私、教室に戻るわ」


「う、うん」




屋上から去る時、雅はポケットの中に手を突っ込んだ。