「その代わり」




雅は、私の前に人差し指を出して、言った。




「沖本君とは、どこまでいってるか、教えてくれる?


そうしたら、諦めがつくから」




この眼。


絶対に嘘だ。




雅が、沖本君を待ち伏せたり、沖本君の家に不法侵入したり、


あんなに粘着質で執着的な雅が、そんな事で諦める訳がない。




けれど、私はまんまと騙された振りをした。




「わかった…」




バレない嘘を吐くのは簡単だ。


相手の目をじっと見ればいい。




「あのね、実は…キスもまだなの…。


怖いから…」


「怖い……?」