「なあ、愛里」




沖本君が、私に話し掛けてきた。




「ん?」




雅の事について聞くのだろうか、と思ったけれど、沖本君が口にしたのは、その事とは全く関係のない事だった。




「もうすぐ夏休みだな!」




ああ、そういえば。


あと数週間で、夏休み。


学生にとっては最大ともいえるイベントみたいなもの。




「夏休み、どっか行かないか?」




嗚呼、去年の夏休みは雅とプールに行ったり、ショッピングしたり、宿題したりで楽しかったなぁ。


でも今年は、こんな奴と過ごすのか………。




「うん♪勿論だよ」




まあ、仕方のない事。


だって、私は沖本君の事を好きな振りをしないといけないのだから。




雅の好きな茂のように、好きでない人を好きであるように振舞わないといけないから。