その日は朝まで泣いた。


優喜と家に帰ったのは、朝の5時過ぎ。


「姉ちゃん最近元気なくね?」


優喜は赤いパーカーを脱ぎながら軽く言う。


「なんにもない。」


私が無愛想にそういうと、優喜は「ふーん」と流し、テレビのニュースをつける。


「あ、これ昨日の俺らじゃん。いつ撮ってたんだぁ?」


テレビの画面には昨日の戦闘が記録されていた。


なんの緊張感のないコンピュータのような声が部屋に響いた。


『昨日、深夜2時、再びSKがSK対処部隊を殺害しました。
記録によるとその被害は日に日に拡大しており、第1地点から第7地点、
全てが警戒体制にはいっているとのことです。
一般人の方々にはまだ被害はありませんが気をつけるよう警告がでています。
以上、朝のニュースでした。』


無造作にテレビをきる。


「え、俺まだ見てんじゃん!」


優喜は再びテレビをつける。


スポーツニュースが見たかったようだ。


「お風呂、先に使うよ。」


優喜は横目で頷いて、再びテレビに目を向ける。


お風呂で念入りに血を流す。


爪の先、頭皮、顔。


顔はバンダナで隠れているが念入りに洗う。


「........」


でも、消せない血がある。


「.........やっぱり血の臭いがする。」


臭いがとれない。


杏は「なんにも臭わないよ」って言ってくれてるけど....。


鼻にも血がついてるのだろうか.....。


いつも、あまりスッキリしないままお風呂から出て、自分の部屋に向かう。


物はなるべく置かないようにしている。


SKとバレたときすぐに逃げれるように。


机の上には一枚の写真。


「母さん......父さん......」


小さい頃に撮った親との唯一の写真。


自然と涙がこぼれる。


SKは元々、私と優喜の両親が開いた。


世界のヒーロー的存在になりたかったらしい。


しかし、依頼はだんだん黒に染まっていき、最終的には世界の裏切り者になっていた。


そして、私たち姉弟の両親は世界に"排除"された。


「どうやったら....母さんと父さんの道を正せるの......?」


どうやったらこの汚染された戦闘が終わるのか。


毎日毎日、同じことを考える。


そして、毎日毎日同じことを思いつく。


「SK対処部隊本部の頭.....仮面野郎を殺さないと.....」


あいつを殺せばこの戦闘も終わるんだ。


母さんも父さんもきっと望んでる。


1時間ほどの仮眠をとり、3時間ほどを使い策略を練る。


「.....仮面野郎を殺すには全員で殺らないとこっちが殺られるな..。」


少し伸びをし、スマホの画面が点滅していた事に気がつく。


「杏?........緊急招集。なんでだろう?何かあったのかな?」


急いでバックに赤いパーカーとバンダナと刃物を詰める。


「優喜~?あれ....?」


優喜は先に行ったようだ。


外はまだ太陽が上から顔を出している。


小腹も空いている。


3時を少し過ぎた頃で小さな子供たちは"3時のおやつ"を食べている頃だろう。


細い路地裏を通り、どんどん人がいなくなる。


そして、路地裏の行き止まりに行き着く。


壁には小さな穴がある。


そこを押すとドアが現れ、SK本部に到着。


ドアをギィーっと開け、薄暗い部屋に入る。


「空海さーん?杏ー?優喜ー?」


何も見えないためライトのスイッチに手をかける。


ライトをつけると、


そこには予想外の光景が目に飛びついた。