ビルの上から杏が下を観察する。


「どうだ?」


空海さんが杏に近づき、状況を尋ねる。


今日の戦闘時間、今日の殺害人数、相手の寸法。


空海さんは全てを把握する役がある。


でないと、私たちはそんなに強くない。


司令塔の空海さんの指示に従い、動く。


それが私、優喜、杏のせめてもの恩返しだ。


ちなみに杏はSKで一番、動体視力に優れている。


優喜はでたらめな攻撃で相手を困惑させる。


空海さんはSKの冷静な司令塔。その場の頭の回転が最も早く、綺麗な刃さばき。


私はSKで一番の戦力。


これの四つでSKは成り立っている。


「そうですねぇ。一人、軽く1000人くらい殺れそうですねぇ。」


杏はウキウキで言う。


「やったぁぁ!今夜は血祭りだぁ!またニュースになるよっ!」


優喜も嬉しそうに言う。


『ニュース=テレビ出演』と考えているらしい。


まぁ、大方間違えてはいないが...。


「ぁ......でも、今日は忙しくなりそうです。」


杏が下を向きなおし、真剣な眼差しを向けた。


「ん?どうした。何か見えるのか?」


空海さんはその杏の表情が気になったらしい。


「今日はSK対処部隊の"本部"の奴等がいますねぇ。運良く、仮面野郎はいませんけど。」


仮面野郎とはSK対処部隊本部の一番の実力者。


まぁ、つまりはトップ。


こいつがいると仕事が殺りにくい。


あんまり、戦闘には顔を出さないからよく知らないが強いのは確かだ。


SK対処部隊はだいたい顔は隠さない。


だが、仮面野郎だけは仮面で顔を隠している。


仮面野郎という異名をつけたのは私だ。


あの仮面の向こうで私たちのことを嘲笑っていると思うと、気がおかしくなりそうだ。


「あいつがいたら、仕事が殺りにくいんだよなぁ。」


優喜は下を遠い目を向け、呟く。


「........ていうか、相変わらず杏ちゃんは本当、目いいなぁ。ここビルの18階だぜ?」


下は暗い闇にしか見えない。


風の細い音だけがする。


SKはいつも一番高いビルの上からSK対処部隊を観察し戦場の資料にする。


「まぁね♪目は人より良いからね♪」


杏は得意げに腰に手を当てた。


すると、空海さんが口を開いた。


「よし。想定人数もできたし、いつものやるぞ。喜々、一発言ってやれ。」


空海さんが私の背中を軽く叩いて怪しげな笑みを浮かべる。


これが戦場開始の合図。


大きく息を吸い、下の奴等に叫ぶ。


「SK対処部隊のみっなさぁ~ん!!!
おっはよーございまぁーすっ!
どうも~SKでぇーす!
今日も殺りに来たんでお相手宜しくお願いしますねぇ~?
準備はいいですかぁ?
じゃあ、いっきまぁーす!!
レディー..........ゴー!!!!!!!!」


喜々の元気な合図で全員が一気に走り出す。


下の連中は拳銃で攻撃を仕掛けてくる。


鼻で笑う。


そんな拳銃で私たちが殺せるとでも?


笑えてきちゃう。


「そんな弾じゃ私たちは殺せないよぉ?」


次々と向かってくる弾を避け、右手で相手を斬る。


「いーち.....にーい.....さーん...」


何人殺したか癖で数えてしまう。


周りを見ると、優喜も笑顔で斬り倒している。


空海さんも口元が緩んでいる。


「杏ー。大丈夫ー?」


相手を斬り倒しながら杏に目線を向ける。


「うん!今日は本部の奴等がいるから斬り後妙があるね♪」


杏は顔にべったりと付いた血を拭きもせず夢中で斬る。


杏は普段、天然で静かな女の子だが、戦場になると人が変わる。


まぁ、皆もそうだけど。