「うっす。」


「おはよう。」


「おはよう、護くん。」


角を曲がったところで護と出くわした。


「傷は癒えた?」


「うーん、まだ少し痛むかな。」


「空海さんのこと手加減してくれたんだね。」


「いや、本気だったよ?強いからねぇ、お宅のボスは。」


三人は今まで敵同士だったとは思えない会話をしながら、教室へ入っていった。


「おいおいおい、護!.......これ護じゃね?」


クラスの男子が護を囲んだ。


手には昨夜の戦闘が載ってある雑誌だった。


「え?そうだけど?」


護があっさりとSK対処部隊のトップであることを認めたせいで、クラスは騒ぎ立てた。


「お前、SK対処部隊のトップだったのかよ?!」


護は微笑んで頷いた。


「でも、ちょっと待ってよ!
この四人のSKの中の
"バンダナ着けてない女"

"フードもバンダナも着けてない女"
って喜々と杏じゃない?」


暗闇での写真であったが私と杏の顔ははっきりと写っていた。


クラス全員が喜々と杏を見つめた。


視線が痛い。


これが世間の目か....。


もう何を言われてもいいか...。


今さら世間に馴染めるなんて思っちゃいない。


でも、少し......辛いかな


深く呼吸し、息を飲んだ。


「...そうだよ。私たち昨夜、護と戦ったSKだよ。」


クラスが変にザワついた。


そりゃ、そうだよね。


殺し屋だもん。


怖がって当然。


はぁ、本当にもう世間に馴染めないんだ。


普通の人間にはなれない.......。


そう思うと涙がこぼれそうになった。


世界から弾き出された疎外感。


耐えられたもんじゃない。


「......かっけー!」


一人の男子がそう言った。


....かっこいい?


殺し屋が?


クラスのみんなは口々にSKを誉め始めた。


「そうだよ!あんなにビル飛び回って本当かっこいい!」


「確かに最初は怖かったけど、案外かっこよかったよね。」


「なんだー、喜々と杏だったんだぁ。」


みんなの発言に堪えていた涙が次から次へと頬を伝った。


悲しい涙ではなく、嬉しい涙が。


それを護が優しく拭いてくれる。


「お前らはもう殺し屋じゃないんだ。これからが本当の人生だ。」


頭をぽんぽんと撫でる護が両親と重なる。


「ぅわぁ!」


護に飛びつき、ぎゅーっと抱きしめる。


「生かしてくれてありがとう。」


世間に馴染めないなんて誰が言った?


そんなことないよ。


居場所はここにあるよ。