本店に異動してきてから紅美は、混乱することばかりだった。
そのストレスからか、心の中に留めておこうと思っていた言葉が、気が付けば口からこぼれていた。
「ここの人たちはなんでも秘密なんですね」
「は?」
「朝比奈さんがデザインしているルチアシリーズだって、どうして指輪のデザインだけがないのかずっと気になってたんです。でも誰も教えてくれなかった……知らないのってきっと私だけですよね? どうしてなんですか?」
「…………」
(何言ってるんだろう私……これじゃ、仲間はずれにされてダダこねてる子供みたいじゃない……)
居た堪れなくなった紅美は、くるりと朝比奈に背を向けて部屋を出ていこうとした。
その時――。
「ルチアに指輪がないのは……デザインができない。ただそれだけだ」
ぽつりとつぶやかれた声は、どことなく沈んでいた。朝比奈が一体どんな表情をしているのだろうかと思ったが、紅美に振り返ってそれを確かめる勇気はなかった。
「……失礼します」
そのストレスからか、心の中に留めておこうと思っていた言葉が、気が付けば口からこぼれていた。
「ここの人たちはなんでも秘密なんですね」
「は?」
「朝比奈さんがデザインしているルチアシリーズだって、どうして指輪のデザインだけがないのかずっと気になってたんです。でも誰も教えてくれなかった……知らないのってきっと私だけですよね? どうしてなんですか?」
「…………」
(何言ってるんだろう私……これじゃ、仲間はずれにされてダダこねてる子供みたいじゃない……)
居た堪れなくなった紅美は、くるりと朝比奈に背を向けて部屋を出ていこうとした。
その時――。
「ルチアに指輪がないのは……デザインができない。ただそれだけだ」
ぽつりとつぶやかれた声は、どことなく沈んでいた。朝比奈が一体どんな表情をしているのだろうかと思ったが、紅美に振り返ってそれを確かめる勇気はなかった。
「……失礼します」



