甘いヒミツは恋の罠

「たまたま友人の飲み会に誘われて……行った先で一緒になっただけです」


「木田宝飾は、“アルチェス“の商売敵だって知ってるな?」


「そ、れは……」


 書類から目を外し、朝比奈がぎろりと鋭い視線を投げかけると、紅美の背筋にゾクッと寒気が走った。


(だから朝比奈さん怒ってるの……?)


「でも、それは――」


「お前にはプライドがないのか?」


「っ……」


「ライバル会社のやつとなんか懇意にするんじゃない」


 紅美の言葉を切るような朝比奈の冷たい視線が、紅美の指先まで震わせた。


「ライバル会社の人だからって……交友関係を持つのは、個人の自由だと思います」


「ふぅん……」


 絞り出す声で紅美が小さく言うと、朝比奈は椅子から立ち上がってゆっくり紅美に歩み寄った。