甘いヒミツは恋の罠

「あっそ」


 それだけ言うと、朝比奈は再び歩き出した。


 その時――。


「週明けにすぐに俺のところへ来い」


「え……?」


 すれ違いざまに朝比奈が紅美の耳元でそう囁いた。紅美は驚いて振り返ると、すでに朝比奈の姿は人ごみにかき消されてしまっていた。


「どうかした?」


「い、いいえ、なんでも……ないです」


(なんだったの今の……)


 ――週明けにすぐに俺のところへ来い。


 それから大野と他愛のない話をしながら駅に向かったが、その言葉だけが頭の中に焼きついて離れなかった――。