甘いヒミツは恋の罠

「あ、朝比奈さん……?」


 朝比奈の腕に絡みついている女にも見覚えがあった。


「あら~偶然、こんばんは」


 化粧が濃くて、数メートル離れていても香水の匂いが漂ってきそうな女。


(この人……そうだ! あの時の――)


 紅美が記憶の扉を開くと、以前、店長室に初めて入った時にいた女の人だと思い出した。


 ――ずいぶん可愛い子を仕入れたのね……ふふ。


 彼女に言われた皮肉めいた言葉が脳裏を過ぎって、紅美の顔が一気に曇った。


「なんでお前がこんなところにいるんだ?」


「朝比奈さんこそ、なんでこんなところにいるんですか?」


「質問を質問で返すな」


 見ると明らかに朝比奈は不機嫌そうだ。何に対して不機嫌なのかはわからないが、この場はさっと切り上げたほうが良さそうだ。