甘いヒミツは恋の罠

 大野と共に店の外に出ると、新鮮な空気が胸をいっぱいにした。


「こうして外に出てみると、いかに店内の空気が澱んでいたかわかりますね」


 今、まさに自分も同じことを考えていた。紅美がそうですね、とにこりと笑顔で応えたその時、ふわっと掌に温もりを感じた。


(え……? 大野さん、私の手……握ってる!?)


「すみません、まだこういうのちょっと早かったですよね……?」


 紅美が驚いて目を丸くしていると、大野が少し慌てた様子で手を離した。


「ちょっと、びっくりしただけです」


「じゃあ、嫌……ではないんですね?」


(男の人にいきなり手を握られて驚くなんて……瑞穂が知ったらきっと笑われるよね)


 そんな余計な意地が紅美を惑わせる。