「よう、ルビーちゃん」


「っ!?」


 先程は空耳だったが、今度は違う。


 確かに聞こえたその声に振り向くと、朝比奈がニッと笑って立っていた。


「お、お疲れ様です」


「そんなおめかししてどこ行くんだ?」


(朝比奈さんって、今日一日外出してるんじゃなかったのぉ~!?)


 今朝、紅美が朝比奈に仕事で用があって店長室に行った時、誰もいなかった。結衣に尋ねると一日外出しているから、今日は戻ってこないかもしれないと言っていた。


(油断してた……)


 車の鍵を人差し指でくるくる回しながら朝比奈がじっと見ている。


 笑顔を作るも顔の筋肉がこわばって引きつっているのがわかった。