『紅美ってば! 聞いてる?』


「へ? あ、う、うん」


 瑞穂の声にハッとなって我に返ると、妄想の王子様の姿も消える。


『とにかく今週の金曜日、仕事終わったら時間空けておいてね』


「……わかった」


『じゃあね』


 慌ただしく電話が切れると、紅美は小さくため息をついてすっかり冷めてしまったおでんを見つめた。


(合コンか……)