電車を降りて、人ごみをかき分けるようにしばらく大通り沿いを歩いていくと、一際目立つスタイリッシュな建物が見えてきた。


(ここが本店……)


アルチェス本店は都会の喧騒の中、一等地に堂々と佇んでいた。


 その威厳ある店構えに、紅美は思わずゴクリと息を呑んだ。有名建築家に設計された建物は、日本にいることを思わず忘れてしまうような異国の雰囲気を醸し出していて、気品あふれる純白の壁に書かれた店名がキラキラと輝いていた。


(憧れの朝比奈翔さんに会える! そして今日からここが私の職場!)


 ようやくたどり着いた本店の店長、朝比奈翔のお膝元で仕事ができる喜びに、紅美は意気揚々とエントランスに入っていった。