甘いヒミツは恋の罠

「嫌じゃないです」


「俺はお前を裏切って傷つけた……それなのに心のどこかでまたお前をぐちゃぐちゃにしたいと思ってしまう」


 朝比奈の声が小さく震えている。いつも自信に満ち溢れ、なにもかも成功してきた朝比奈が自分のせいで困惑している。


 この人は私のものだ――。


 そう思うと、紅美は密かに優越感に浸った。


「何度裏切られたって、私はきっと朝比奈さんのことを何度も許します……惚れた弱みって、ほんと自分でもどうしようもないんです」


「紅美……!」


 初めて名前を呼ばれた。それは沸き起こる感情を抑えきれないといった感じで、再び紅美に口づけた。


「あ……ん」


 紅美は朝比奈に応えるように大きな背中に腕をまわして、僅かに空いた隙間から息継ぎをしながら胸を弾ませた。