甘いヒミツは恋の罠

 朝比奈のような実力デザイナーに、偉そうなことを言える立場ではないことはわかっている。しかし、朝比奈にはいつものように傲慢でいて欲しいと思うと、紅美は無意識にそんなことを口走っていた。


「朝比奈さんは、ちょっと惑わされただけです。今、必死に前を向こうとしてるじゃないですか、私……そんな朝比奈さんが好きです」


「ばっ……! な、なに言ってんだよ」


 ストレートな紅美の言葉に一瞬、朝比奈は動揺して赤面しながら伏し目になった。


「ふふ、朝比奈さんもそんな顔するんですね」


「……こいつ」


「きゃっ」


 不意に勢いよく手を取られると、ソファに座る朝比奈の胸に倒れこみそうになった。体勢を整えようと身体を起こしたが、朝比奈はそうはさせてくれなかった。


「ち、ちょっと……朝比奈さ――」


「お前、生意気なんだよ」


 そして、ふわりと身体が浮いたかと思うと、視界が反転して気が付けばラグの上に組み敷かれてしまっていた。