甘いヒミツは恋の罠

※ ※ ※

 会社を出発して数時間が経った――。


 長い間電車に揺られ、そして長いトンネルを抜けたところで紅美は、目の前に広がっている景色に目を瞠った。


“国境の長いトンネルを抜けると雪国であった”


 かの有名な川端康成の小説『雪国』を彷彿とさせる一面の銀世界に、紅美は思わず感嘆のため息を漏らした。


「すごい雪……」


 雪を見るのはクリスマス以来だった。あの時の雪は全てが灰色に見えたが、改めて雪がこんなにも美しく光り輝くものだと知った。


(この雪の光を集めてアクセサリーを作れたら素敵だろうな……)


 景色を見ていると、ますます高揚感が高ぶってくる。けれど、今から向かう先は朝比奈のいるアトリエだ。クリスマスのことを思い出すと、高ぶっていた気持ちが一気に急降下してしまう。


(大丈夫、これは仕事なんだから……)


 紅美は胸元で輝くネックレスをぎゅっと握り締めた。