甘いヒミツは恋の罠

※ ※ ※

 嫌な胸さわぎがする――。


 その頃、朝比奈は行きつけのクラブで珍しくひとりで飲んでいた。


 今日一日、紅美の姿を見ていない。同じ会社の屋根の下にいながら姿を見ることはできなかった。内線で呼びつければすぐにでも店長室に来るだろうが、下手に口実を考えている自分が嫌になって呼びつけるのを結局やめてしまった。



 朝比奈さんの馬鹿! 大嫌い――!



 あの時の紅美の言葉が数日経った今でも鮮明に蘇る。その心底傷ついた表情が、朝比奈の胸をちくちくと突く。


「あ! 瑠夏じゃない、どうしたのよー! 一人酒? めっずらしい」


 考えに耽っていると、瑠夏がこのクラブでよく会う女が擦り寄ってきた。


 普段は大手企業の重役秘書をしていて、クラブに通うことでストレスを発散しているらしい。何度か一緒に飲んだことはあるが、やはりこんな雑然としたクラブで飲むような雰囲気の女ではなかった。