甘いヒミツは恋の罠

「兄貴に憧れてここまで来たのに、実際は違って失望したか?」


「え……?」


 長めの前髪がゆらりと揺れると、その隙間から深く鋭い朝比奈の視線とぶつかる。漆黒の瞳の中に、なにかどんよりとした物憂げなものを見ると、紅美はその視線から目を逸らすことができなかった。


「お前、眼鏡じゃない方がいいな」


「は?」


「それにうまそうな匂いがする」


 朝比奈の大きな手が紅美の後頭部を捉えると、生温かい舌がぺろっと紅美の白い頬をなぞった。


「ひぃっ!」