甘いヒミツは恋の罠

 あんな小娘ひとりたぶらかして手中に収めることなど、造作もないことだと思っていた。


 甘い言葉を囁いて、キスをしてやれば大抵の女は堕ちる。男として最低なことだとはわかっていたが一人の女性を愛することなど、いまさらくだらないことこの上なかった。そもそも、愛するという感情そのものが自分にとって一番必要のない感情だった。


 それなのに、紅美が自分の目の前に現れてからというもの、朝比奈はなにかがおかしいと感じ始めた。


 馬鹿みたいに一生懸命で、純粋で裏切られてもものともしない紅美の姿になぜか興味が沸いた。きっとそれは自分にないものを持っているからだと朝比奈はそう思った。


 そして、気がつけばいつも傍に置いておきたい存在になって目が離せなくなってしまった。

 子供の頃からの悪い癖のようなもので、朝比奈は気に入ったものは必ず手に入れて傍に置きたがった。