甘いヒミツは恋の罠

(全部嘘だったなんて……そんなことにも気付かないで浮かれて……最低だ)


 人に何度もぶつかりながら外に飛び出すと、ちらちらと雪が降り始めていた。その寒さだけが紅美の身に染み渡っていく。


(寒い……)


 史上最悪なクリスマスだというのに、街を歩くのは幸せそうなカップルの姿ばかりだ。毎年クリスマスの時は仕事でカップルを見てもなんとも思わなかったが、この時ばかりは羨ましく思えた。


「これからどこ行くー?」


「お前の好きなところでいいよ、今日はスリスマスだろ?」


「やったー!」


 そんな会話が聞こえてきて、紅美は惨めな思いにただ胸が締め付けられていった――。