甘いヒミツは恋の罠

「本当だったんですね……このネックスが、神楽坂涼子の希少デザインだって、その価値を手に入れるために最初から――」


「あぁ、そうだ」


 冷たい朝比奈のその言葉に紅美の言葉が固まる。


 そんなことはでたらめだ。嘘に決まっている。とそう言って欲しかった。心のどこかで小さく期待していた自分が滑稽に思えた。


「店長室でキスしたのも……」


「単なる戯れだよ、知ってるだろ?」


「私の母から目を誤魔化すために庇ってくれたことも……」


「そのネックレスの価値を知らないお前が、母親に誑かされて引き渡したりでもしたら元も子もないからな」


(なに……それ)


 開き直る朝比奈の態度に紅美は唇を噛むと、じっと黙ってその場から動けなくなった。