甘いヒミツは恋の罠

「……さっきの電話、大野からだったんだろ？」


　朝比奈に聞かれなければずっと黙っているつもりだった。自分から言うことでもなければ触れて欲しくもなかった。けれど、真剣な眼差しで朝比奈に問われれば、それは答えざる得なかった。


「……そうです」


「あいつにはあれはど関わるなと言っただろう？」


　苛立ちを含んだ口調で朝比奈に言われると、紅美の胸につふつふとした思いが生まれる。


「朝比奈さんも、大野さんと同じこと言うんですね。関わるなって……」


「あぁ、そうだ。大野と付き合っていたら、ろくなことにならない。それに――」


「朝比奈さんが……私を騙してるって本当ですか？」


　心の中に留めておこうと決めていたのに、気がついたらそれを口にしてしまっていた。


　一瞬、凍りついたような朝比奈の表情を見て、紅美は大野が言っていた事は嘘ではなかったのだと確信した。