甘いヒミツは恋の罠

「こっちの景色は照明が少ないんでしょうね、街の夜景とは全然違いますね」


「俺はこの夜景を見た時にルチアシリーズのモチーフを思いついた」


「え……?」


 ぽつりと呟く朝比奈は、穏やかでどことなく懐かしむような視線で眼下を見下ろしていた。


「派手すぎず、地味すぎず……それでいて美しいもの、宝石はデザインがなければただの石だ。アクセサリーとして石や金属に命を吹き込むのは俺の役目……って、ここで気づかされたんだ」


「……朝比奈さんも、挫折することがあるんですね」


「……ふん、別に挫折したなんて言ってないだろ」


(嘘ばっかり、顔に挫折した時にそう励まされたって書いてあるよ……)


 その時、朝比奈がどんな挫折を味わっていたのかと想像する。プライドが高くて傲慢で、俺様な朝比奈が心が折れるほどの挫折とは一体どんなものだったのだろう。


 そんなふうに思っていると、朝比奈が口を開いた。