甘いヒミツは恋の罠

「いいんです。もう忘れましたから、大野さんも今日は忙しかったんじゃないですか?」


『そうなんだよ、紅美さんのネックレスの噂はこっちまで届いてるよ、売上も上々だったみたいでよかったね』


「ありがとうございます」


 自分の作品を褒められ、こそばゆい気持ちに頬が緩む。


『それで、もしよかったらなんだけど……今夜デートして欲しいんだ』


「え……?」


『この前みたいなことはしない、約束する』


 ダブルブッキング――。


 二人の男性に同時にデートに誘われて、紅美は今までにない経験に困惑した。


「えっと……その」


『もしかして、もう誰かと約束してるの?』


「はい……朝比奈さんとこれから――」


『他の男はとにかく、瑠夏はだめだよ』


 急に低い声で言葉を遮られると、紅美はそれ以上なにも言えなくなてしまった。


 表情が見えなくても、大野が電話口の向こうで苛立っているのがわかる。