甘いヒミツは恋の罠

 明らかに目の前に座っている男は、自分の憧れていた彼とは違う。


 少なくとも四年前はこんなふてぶてしい態度ではなかったはずだ。


(そうよ、朝比奈店長はもっと紳士で、インテリな感じで……)


「それで? あんた誰? ここに入る時は、誰か先に部屋にいることを確認してからって教わらなかったか?」



 ――来客が先にいないか確認してからドアを開けたほうが……いいかも。



 その時ふと、結衣の言葉が過ぎると、ようやくその言葉の意味を理解した。


(なるほど……そういうことだったのね)


「ちゃんとノックしましたし、返事がありましたので」


「ふぅん……大抵の社員は察して出直すけど。でも、お前がまさか身内だったなんてな……大口女」


「ちょ、その妖怪みたいな呼び方やめてください」


「俺のことをストロベリーなんとかって先に呼んだのはそっちだろ」


(うぐ……)