左の薬指に煌く指輪、それはひと目でも朝比奈がデザインしたものだと直感で悟った。


「お前、どこまで知っている?」


 無表情で絵里の写っている写真を見つめながら朝比奈がぽつりと言った。


「すみません。大野さんから聞いてしまいました……。婚約者が指輪と一緒に蒸発してしまったって……」


「そこまで聞いてりゃ上等だな……」


「私……朝比奈さんのデザイン、好きなんです。いつか朝比奈さんみたいなデザイナーになれたらって思って……だから、お願いです!」


 こういう時に限って気の利いた言葉が見つからない。


 紅美は、自分の気持ちを伝えることでただ必死に言葉を並べた。けれど、真剣な紅美とは裏腹に、朝比奈は冷たく紅美を見下ろしているだけだった。