甘いヒミツは恋の罠

「なに?」


 ようやくくぐもったような男の声で返事が返ってくると、紅美はハッとなって慌てて気を引き締めた。


「あ、あの! お忙しい中失礼します。ご挨拶に伺いました」


 そして再び沈黙する。もしかしたら店長は取り込み中で手が離せないのかもしれない、と紅美が改めようとした時だった。


「あっそ……どうぞ」


 まごまごしていると、いとも簡単に入室の許可がおりた。紅美はドキドキしながら、ドアノブに手をかけてゆっくりとドアを開いた。


「失礼します。本日付で本店に異動になりました皆本……紅美……で――っ!?」