甘いヒミツは恋の罠

(あれ?)


 紅美がエレベーターへ乗り込み、最上階へのボタンを押そうとした時、その指が止まった。最上階は五階だったはずだが、エレベーターは四階までしか行かない。


(四階から階段ってことかな……?)


 一階から店長室へ直通していないのはセキュリティーのためかもしれない、と勝手に憶測すると、紅美は四階のボタンを押した。


 ポン、という機械音とともに四階へ着いてドアが開かれると、そこには下の階とは全く違う雰囲気が漂っていた。


 倉庫室や資料室と書かれた部屋を通り過ぎ、少し薄暗い廊下の奥に階段が見えた。


(なんか、ホラーハウスって感じ……)


 所々に窓があるおかげてかろうじて陽の光は入ってくる。けれど、ヒールの響く廊下はけして心地いいものではなかった。