甘いヒミツは恋の罠

※ ※ ※

(まぁ、さっきの人だって、単なる偶然で二度と会わないと思えば気にしててもしょうがないか)


 立ち直りの早いところは、紅美の長所でもある。


 紅美は、やはり無防備にも机の上に財布を置き忘れてしまったことを確認すると、迷子になっていた我が子を腕の中に引き込むようにして、それをバッグの中へしまいこんだ。


(そろそろ店長戻ってきたかな……)


 時計を見ると午後一時。戻ってきているかどうかはわからなかったが、あまり挨拶が遅れてしまうのも失礼かもしれないと思い、紅美は腫れの引いた目元を確認すると、眼鏡をコンタクトに変えて店長室へ向かうことにした。