甘いヒミツは恋の罠

「美味しいものを大口上開けて食べるのは、食べ物に対する表敬です!」


「ぷっ! あはは」


 その男が噴き出して笑った瞬間、不覚にもほんの少しドキリとしてしまったが、紅美はすぐにムッとした表情になった。


「なにも笑わなくたって……」


「おもしろい女、そんな顔してムキになるなよ」


「そんな顔……?」


 すると、その男がすっと人差し指を突き出してきた。


 長くて綺麗なその指に気を取られている隙に、その指が湿気がかった紅美の眼鏡のレンズをなぞる。なぞった部分からくっきりと見えて目が合うと、その男がニヤリと笑った。