「あいつとは学生時代、デザインを一緒にイタリアで学んだだけの関係だ」
「でも、朝比奈さんの才能は誰も真似できないって――」
「虫酸が走るな、そういうの」
朝比奈の冷たい目がさらに冷めて見える。なんの感情も感じられないその表情に、紅美はごくりと喉を鳴らした。
「あの男は、木田宝飾の社長の妾の息子だ。母親に引き取られて今は大野を名乗ってるが……」
「え……?」
「本妻との間に後継ができなくて、あの社長も大野を次期木田宝飾の後継者に考えてる。けど……あの男には気をつけろ、なんでも人のものを奪って自分の物にしようとする」
あの温厚そうな大野が、人のものを盗むなんて紅美には信じ難かった。
「あの……ひとつ聞いていいですか?」
「なんだ……?」
「大野さんって、ルチアシリーズに指輪がない理由……知ってるんですか?」
「……そんなこと、知ってどうする?」
朝比奈が椅子から立ち上がると、ゆっくりと紅美の傍へ歩み寄ってきた。
「でも、朝比奈さんの才能は誰も真似できないって――」
「虫酸が走るな、そういうの」
朝比奈の冷たい目がさらに冷めて見える。なんの感情も感じられないその表情に、紅美はごくりと喉を鳴らした。
「あの男は、木田宝飾の社長の妾の息子だ。母親に引き取られて今は大野を名乗ってるが……」
「え……?」
「本妻との間に後継ができなくて、あの社長も大野を次期木田宝飾の後継者に考えてる。けど……あの男には気をつけろ、なんでも人のものを奪って自分の物にしようとする」
あの温厚そうな大野が、人のものを盗むなんて紅美には信じ難かった。
「あの……ひとつ聞いていいですか?」
「なんだ……?」
「大野さんって、ルチアシリーズに指輪がない理由……知ってるんですか?」
「……そんなこと、知ってどうする?」
朝比奈が椅子から立ち上がると、ゆっくりと紅美の傍へ歩み寄ってきた。



