甘いヒミツは恋の罠

 一日の締めくくりに紅美は店長室へ行くことになってしまった。朝比奈としても仕事が終わったら早く帰りたいと思うはずだ。それなのに、なぜ、自分をわざわざ呼びつけるのか、紅美にはその意図がわからなかった。


「失礼します」


 紅美は、緊張しながらノックをすると、入れ、という少し疲れたような返事がして中へ入った。


「お疲れだな」


 そう言いながら朝比奈はルービックキューブに夢中になりながら、ちらりと紅美を見た。


「それで、フェアのデザインはどうなった?」


「はい、一応出来上がりました。これで明日には業者へデータを送れると思います」


「ふぅん、見せてみな」


 カチッと音を立てて六面の色が揃うと、ようやく朝比奈は顔を上げた。