甘いヒミツは恋の罠

「ありがとうございます。お会計ですね?」


「あ、はい」


(あれ? 財布……どうしたっけ?)


 バッグから財布を出そうとしたが、どこにも財布が見当たらない。にこにこと笑っている店員に焦りを感じながら、紅美はバッグの中を覗き込んでみた。


(な、ない……! 嘘!? もしかして会社に忘れて来ちゃったのかな)


 ふと、後ろを見ると紅美の後には二、三人並んでいて、みんな「早くしろよ」と顔をしかめている。


(どうしよう~!)


 今日に限って電子マネーも手元になく、絶体絶命のピンチに嫌な汗が滲んできた時だった。