甘いヒミツは恋の罠

「なぁ」


「え?」


「お前にひとつ聞きたいことがある」


 朝比奈の顔が急に真剣なものに変わってドキリとなる。すると、朝比奈は紅美と向かい合うように椅子に座ると、じっと紅美を見つめた。


「お前の親類にジュエリーデザイナーはいるか?」


「私の、親類に……?」


 なんの脈絡のない会話に紅美が戸惑っていると、朝比奈がすっと目を細めた。


「祖母が、昔若い頃デザイナーだったって話は聞いたことありますけど……あまりよく知らないんです。物心ついた時にはもう祖母は仕事してませんでしたし」


「そうか」


 朝比奈が一体何を言おうとしていたのかわからないまま、二人の間に長い沈黙が訪れた。 すると――。


「まぁ、今言ったことは気にするな。いいデザインを期待してるぞ」


「え? うわ!」


 そう言うと朝比奈は、ずっと手にしていた紅美のデザイン画を押し返すと席を立った。