甘いヒミツは恋の罠

「すみません、私の悪い癖みたいなもので……馬鹿にされたからってすぐカッとなってしまって……」


「いいね、お前……気に入ったよ」


「……はい?」


「俺は、気が強い女はタイプだ」


(はぁぁあ……!? そ、そんな、勝手にタイプにしないでよ)


「し、失礼します!」


 紅美がペコリと頭を下げて部屋を出ていこうと身を翻した時だった。


「待て」


 そう呼び止められて立ち止まると、振り返る前に朝比奈が紅美の背中に向かって言った。


「お前の仕事が終わってからでいい、今度から毎日店長室に来い」


「え……? ど、どうしてですか?」


「一日の終わりにお前と話すと、仕事のストレスも気が紛れそうだ」


(なにそれ……それって、たんなるストレス解消剤ってこと!?)


「お断りしま――」


「お前に断る選択肢はない。なんせ、うちのお得意バイヤーのへそを曲げたんだからな、責任は取ってもらおうか、地味子ちゃん……じゃなかったルビーちゃん?」


「うぐ……」


 それを言われると紅美は言葉が出なかった。唇を噛み締めて部屋を出ると、朝比奈がクスクスと笑っているのが聞こえて不愉快になった。