甘いヒミツは恋の罠

「あの、なにか……?」


「デザイナーのわりにはあなた地味って言われない?」


 足の先から頭までまじまじと、まるで見定めるように葵が紅美を見た。


「べ、別に……そんなことは……」


「あ! 思い出した! あなた御宿支店にいた地味子ちゃんね?」


「……はい?」


(じ、地味子……ちゃん?)


 そういうと葵はケラケラと小馬鹿にしたように笑いだした。


「そうそう! 御宿支店に行ったことがあるバイヤーから聞いたのよ、デザイナーってオシャレの最先端ってイメージじゃない? 珍しいくらいに地味な女の子がいるって、それがあなただったのね」


(そんな話、絶対に嘘だ……そりゃ、この人に比べたら地味かもしれないけど……)


 からかおうとして作り話をしているに決まってる。そう思うと、紅美はふつふつとした苛立ちを覚えた。