「まぁ、ライバル会社と懇意にするなっていうのは、おおかた瑠夏は紅美さんを僕に近づけたくないっていう単純な私情の理由なのかもしれないけどね。約束するよ、仕事上の突っ込んだ話しはしない、お互いにね」


「ありがとうございます」


「あ、そういえばさっきから口調が堅苦しくなってるよ。でもまぁ、無理に直すのも難しいかな」


「そう、ですね……」


「今日の紅美さん、なんとなくだけど……少し悩み事があるように見えたんだけど、気のせいかな? 僕でよければ相談に乗るよ」


 ここで大野に甘えてもいいのだろうかと少し考えたが、紅美は胸の中でモヤモヤとしたものを抑えることはできなかった。


「実はこの前、ルチアシリーズに指輪のデザインがないことを朝比奈さんに尋ねたんです」


「瑠夏に……?」