甘いヒミツは恋の罠

※ ※ ※

 昼休み――。


(ここのサンドイッチおいしい! また来ようかな)


 紅美は普段、手作り弁当持参派だったが本店の周りの店を物色がてら、近くの喫茶店に立ち寄り、サンドイッチをもぐもぐと一人で食べていた。


(はぁ……やっぱり眼鏡だとちょっと調子悪いな……湿気でレンズが曇るし)


 夏も終わりかけの九月、暦の上では既に秋だったが、まだまだ残暑の厳しい日が続いていた。過剰に冷房の効いた建物から外に出ると、前が見えないほどレンズがいちいち曇るのが煩わしく思えた。


 ハムやベーコン、豊富な野菜が挟み込まれたサンドイッチを、紅美がひと口でぱくりと頬張ったその時だった。


(ん? なにか視線を感じるよーな……)


 ふと、斜め向かいの席に目をやると、二十代後半くらいの若い男がじっと紅美を見ていた。両肘をテーブルについて、口元で指を組んでいる姿はどこか悩ましげだった。