昔の私に伝えたい言葉

あんたは、1人じゃないよ。
何も怖いものなんてないよ。
大切なものがあんたを守ってくれるよ。
だから、負けんな。


1、出会い

「愛!部活行こう!」
「んー!!今いくっ!」
水道の蛇口をぶっきらぼうに閉め、
口を腕で拭きながら走った。

私の名前は 田中 愛。中学2年。
部活は、バスケ部。1年の時からバスケ一途に生きている。

「ナイスシュートッ!!」
体育館に響き渡るコーチの声。
今は部活で試合をしている最中だ。

「まだまだっ」
そう独り言を呟くと私は、1人でドリブルをして3人抜かし あっと言う間に
ミドルシュートを入れた。
「愛ーーー!!」
同じチームの子達が声を上げる。
コーチも微笑んでる。
この瞬間が私の一番好きな時間。
ただガムシャラにボールを追いかけて
それだけでも何かに熱中出来るのは初めてだった。
「愛、お疲れ様!」
親友の山田 沙羅が声をかけてくれた。
沙羅も同じバスケ部でいつも側に居てくれる大切な存在。
「ん!沙羅もお疲れさん!」
そう言うと私は、沙羅の髪をぐしゃぐしゃっとした。
「あー、愛が男だったら恋してた。」
と笑う沙羅。
私も男が良かったよ。楽そうだしね。
「でも、女じゃなきゃ、私こうして沙羅の隣にいられなかったかもだしな!」
そう言った後、私は続けて
「沙羅、帰るぞー?」
真っ暗な空を見ながら言った。


「じゃ、ここでいい?」
「うん!いつも送ってくれてありがとう!」
いつもどうり、沙羅を家の近くまで送った。
「それじゃあ、またね。」
私は、沙羅に背を向き前に歩き出した。
今日の夕飯何かなー?お腹すいた。
「愛も可愛い女の子なんだからね!気をつけて!バイバイ!」
沙羅が急に叫ぶからビックリして
こけそうになった。
もう一度沙羅を見て
「バーカ!」
手をふった。

それにしても7時にでもなるとこんな暗くなるんだな。真っ暗な空を見ながら
もくもくと歩いていた。
前を見てなかったからか、石につまずいて私は、転んだ。
「あっ!」
手に持っていたバスケットボールが
転がって行っちゃった。
やばい!!転がって行った方に川あるじゃん。落ちる?それは、やだ!!!
でも足痛くてすぐには立てない。

” …トン ”

え?

「これ、あんたの?」
暗くてよく見えなかったけど月の光から
顔だけは見えた。目が丸く大きくて、
髪は茶髪で、肌が白い。
男子…?
「そ、そう!!ありがとう!!」
良かった…落ちなくて。
本当にビックリした…。
「女の子がこんな時間に危ないよ。」
そう言うと彼は、バスケットボールをもって私の側にきて
「はい、どうぞ。」
ニッコリ笑ってボールを前に出した。
「本当にありがと…」
私は、受け取った。
心臓の次に大事なバスケットボール。
このボールは、私にバスケットを教えてくれた大好きなお父さんから貰ったものだから…。今はお父さんも亡くなってしまって、このボールが私の支えだったから…無くなったらどうしようって思ってた。
「え?そんなに転んだ所痛かった?」
と彼が驚いた顔で言う。
「痛くない。」
「泣いてるよ。」
え?安心したせいか、目からは涙が溢れていた。
「あ、えっと…嘘嘘!大丈夫!」
涙をゴシゴシと腕で拭き、
私は今すぐにでもここを立ち去りたいくらい恥ずかしい気持ちになった。
「まって!バンソウコウ使いな。」
彼は、私にバンソウコウをくれた。
最近の男子ってこんなに準備良いものなの?気づいたら彼は
10メートルくらい先にいた。
そういえば、名前なんて言うんだろう。学校どこだろう。聞いておけば良かったな。

(ありがとう。)
心の中でそう呟いて
バンソウコウを右手に握り
左手にバスケットボールを持ち
家まで無我夢中で走った。