次の日、仕事へ行くと昨日のプロポーズの話で持ちきりだった。


昨日休みだった木村さんなんかは、「だから、ももちゃんには怒らないんや」と、厭味っぽく言っていた。


しかし、中川副師長は、

「ももちゃんには怒る要素がないから怒られない。
あんたは、怒られる要素が山ほどあるから怒られる。
それだけ。いい歳して、そんなこともわからんの?」

と一喝した。


バツの悪そうな木村さんは、「トイレに行ってきます」とナースステーションを出た。


その後は、

「いつから付き合ってるの?」

「どっちが告白したん?」

「普段はどんな感じなん?」

「やっぱり、ももちゃんには優しいの?」

と、まるで記者会見のように質問攻めにあっていた。


それはしばらくの間続き、私と佐々木先生が回診をしていると、すれ違う職員はニヤニヤと笑っていた。


「なんか、注目されてるな」


「・・・・・・」


あんたが公開プロポーズするから悪いんだろうが!


「百井さん、今週の日曜日、誠泉病院の佐々木院長と会ってくれますか?」


なぜか仕事モードで、彼は両親に会って欲しいと言った。


「わかりました」

「では、詳細はまた連絡します」


と言うと、1階へ下りていった。


時々思う。

彼はなぜあんなに不器用なんだろうと・・・。


素直に言えなくてあんなプロポーズをしたり、親に会って欲しいと言えばいいだけなのに、あんな言い方をして・・・・・・極めつけは。あの台詞。





『ただの下心やから」


きっと私はあの台詞にやられてしまったんだ。



あの時すでに私は、あなたに恋をしていた。




・・・あれ?『恋』って下に心がついてるやん!


・・・・・・これってもしかして?


『ただ恋をしているだけ』と言ったの?


ふふふ・・・・・・にくいぞ!佐々木瞬!



そして私は、あっけなく『下に心』がついた恋をしてしまったんだ。



それは、とても幸せなことで


でも辛くもあり


泣くこともあった



例え、この先どんな困難が待ち構えていようと、私は彼がいれば生きていける。



そう思えるんだ。