創立25周年を迎えたこの立花病院は、病床数75床、脳神経外科、消化器外科、内科を主に診療し、救急病院にも指定されている。


 私―百井睦美―は、この病院で看護師をしている。

以前は、誰もが一度は聞いたことがあろう有名な大学病院で勤務していたが、いろいろあって3年で辞め、地元に帰ってきて1年半が過ぎようとしていた。


この病院は、前の病院とは違い、ドクター同士の確執のようなものはなく、割と働きやすい。



「はあ・・・ようやく落ち着いた」


 ようやく夜勤の仕事が落ち着き、ナースステーション内の丸椅子に座り、ブラインドの隙間から漏れる朝日を背に感じ、カルテが山積みされているテーブルに私は突っ伏した。



今やどこも電子カルテに移行しているというのに、この病院は未だに紙カルテを使っている。


その理由が、院長の機械音痴にあるとも言われている。


「ももちゃん、今日はきつかったね。でもあと少し頑張ろう!」


そう柔らかい口調で言うのは、主任の高倉さんで今日の夜勤のメンバーの一人だった。


 彼女は、看護師歴14年の35歳だが、見た目は若く20代後半と言っても通りそうである。


しかし、その見た目に反して、仕事はベテラン並みにテキパキとこなす。

そして何と言っても、患者さんからも職員からも信頼されていることからも、彼女の人柄の良さがわかるのである。


 彼女の声に後押しされ、最後の仕事に取り掛かるべく、ナースステーションを出た。