土曜日。

人生で初めて、前日眠れないっていうのを味わった。
遠足前日だって、しっかり爆睡出来た私が。
 
自分史上最強に可愛いと思ってもらえる洋服を寝ずに考えてしまった。
お風呂だって、いつもより長く半身浴した。

おかげで、軽く脱水症状になってしまい、貧血みたいにリビングで倒れてしまい、ママに怒られるはめに。
 
それでも、今日という日が、どれほど楽しみだったか。
 
昨日、会社を出るとき、彼に電話番号とLiNeのIDを教えてもらった。
彼と親しくなってたはずなのに、昨日まで彼の連絡先すら知らなかったんだと、ちょっと複雑な気持ちになった。
 
初めてのLiNeのメッセージは、
『明日、横浜駅に4時でもいいかな?』
もう、何時だっていいに決まってる!と部屋で叫んだ。
TVを見ていたママには、気が付かれなかったようだけど。
 
楽しみ過ぎだと気が付かれたくなくて、少しぎりぎりに到着したかったのに、全力1時間前に横浜駅に到着してしまった。

何しよう・・・

お茶をしようと思っても、あまり横浜に土地勘がない。
ちょっとブラブラしていたら、高島屋を発見。

デパートで買い物なんて、出来るお金の余裕なんてないけど、ちょっとでも気持ちを落ち着かせないと。
 
今の会社に入るまでの長い時間、新卒で入った会社をすぐに辞めて、派遣社員を7年ぐらい続けてきた。

実家暮らしで貯金なんて概念、0%で遊び続けてきた私には、毎月入るお給料で、その月暮らしをすることが普通。

ただ、今の会社のおかげで、ボーナスを頂く身分になったから、少しだけ、将来を考えて、貯金は始めたものの、まだまだ、高級デパートで、ブランドものを買える余裕なんてないのだ。
 
そうやって、現実を思い返していたら、彼に会う前のハイパーなテンションも落ち着いてきた。
 
落ち着いて考えてたら、時間ギリギリってやっぱり大人として失礼だなと思い、10分ぐらい前に待ち合わせ場所に行くことにした。
 
3時50分
横浜駅中央改札の近くにあるドトール前集合
 
私の方が先に来てると思ったのに、なんと彼が先に待ってた。
さすが、営業のスーパーエース。

時間通りに動く彼の成績は、社内でも一、二を争うぐらい優秀。
彼を狙ってる社内の女子が多いと、最近社内の情報ツウ女子に教えてもらった。
 
仕事の時よりも、カジュアルなのはもちろんだけど、どこまでも期待を裏切らない・・・
はずなのに。

ちょっと、期待が大きかったか?

スーツの姿にドキドキして、恋に落ちる女性は多いようだけど、やっぱり一度はそんな彼の日常がどうなのか、知るべきだ。

今日の彼は、タレントの勝丸さんをほうふつさせる格好だった。
薄いブルーのオックスフォードシャツの半袖に、白のハーフメンパン。
それに、石田澄一ばりの、素足に皮のカジュアルシューズ。
 
たぶん、恋は盲目?のせいか、彼の顔立ちが少女マンガ級に美化されていたのは、間違いない。

さっき、高島屋で時間を潰したせいか、気持ちもかなり落ち着いてしまい、冷静に彼をみてしまったのかも。

でも、これは良い事だ。

冷静に彼を見た時に、一緒にいて、やっぱり好きなのかどうかわかる。
 
「お待たせして、ごめんね。」

冷静にはなったけど、今日も満面の笑みであいさつをした。
 
「全然大丈夫。会社で会う時と雰囲気違うから、驚いた。(笑)」
 
「あ、似合わないってこと?」

「違うよ。可愛いなって。」
 
はい、きた。
そんな言葉、久々に聞いたから、冷静になってたテンションが、一気にまたマックスまで振り切れそうになった。