ーーこれからまた戦が始まります。

先日の京で起こった池田屋事件では、多くの長州藩士が新選組によって殺されました。

尊王攘夷。公武合体。

私にはよくわからないけれど、でも夫たちがお国の為を思って戦うのだけはよくわかります。


「次こそ、我が長州の番です」

その日依頼、彼は目頭を熱くさせながら仲間の恨みを果たすのだと奮起していました。

しかし私はーー、

彼にはなるべく戦には行って欲しくないのです。

死んで欲しくなど、ないのです。

しかしそれが本音でも、それを口に出すことなど、到底許されることではありません。

だから私には黙って彼を送り出すしか、してやれることはないのです。



あくる日の夜、久坂玄瑞(クサカ ゲンズイ)の妻、文(アヤ)は、不安な面持ちで月夜を見つめていた。


明日、京へ向かう彼を見送らねばならない。


「あの頃が、懐かしいものですね・・・」


文は彼から貰ったお守りをぎゅっと握り締めた。