「泣いているのですね。どうされましたか?」

 突然、美麗の視界が大きな陰で覆われた。着物の袖から片目だけ上げてそちらを見る。

「どうされました?」

 次は流暢な日本語だったが、アクセントが独特で、日本人でないのはすぐに分かった。

「どうぞ、私の事など、お気になさらないで下さいませ。お客様ならばすぐに誰か呼びに」

「シー……」

 優しい声で、黙るようにうながされ、やっとその人をまじまじと見た。
 

金髪碧眼、甘い笑顔を貼りつけた、外国人。この実家は300年以上前から建てられた、文化遺産に指定されている古い建物。二メートル近い外国人には天井に頭が着きそうなぐらい狭い。